日本、世界のエネルギー地図

世界のエネルギー地図が塗り替わる

東京電力福島第一原子力発電所事故を契機として、我が国でもエネルギー政策の見直し機運が高まっている。すでに、2010年六月に発表された「エネルギー基本計画」をそのまま実施に移すことは難しくなっている。原発に対する国民の信頼が大きく揺らいだからである。ちなみに、同計画では、07年度実績で発電量に占める比率が約26%であった原子力を30年には約50%に引き上げることを目指していた。また、その前提として、一四基以上の原発を新設すると共に、設備利用率をそれまでの約60%から約90%に引き上げることとしていた。

 

おそらく、今後のエネルギー政策を検討するに当たっては、電力の安定供給を維持しながらいかにして原発への依存度を引き下げていくかが課題となろう。問題は原発依存の低下分をどのようなエネルギーで補うかである。こうしたなか、再生可能エネルギーヘの期待がにわかに高まっている。ただし07年時点でも、水力も含めた再生可能エネルギーが発電量に占める比率は約九%に留まっている。エネルギー基本計画でも再生可能エネルギーについて
はかなり高めの目標を掲げていた。しかし、技術面や経済性の問題を考えれば同比率の短期的な引き上げは望めまい。もちろん、今回の事態を受けてさらなる引き上げが目指されるにしても、少なくとも中期的な時間軸において急増するには限界があるだろう。

 

そうであるとすれば、現実的には、予定していた原子力でのエネルギー供給の減少分は石油・天然ガスを中心とする化石燃料で埋め合わせることになる。特に、石炭や石油に比べて二酸化炭素の排出量の少ない液化天然ガス(LNG)の利用が拡大しよう。以下では、中期的なエネルギー情勢について、米国でのシェールガス革命や、中東における民主化を求める最近の動向に焦点を当てながら見ることとしたい。

 

エネルギー危機

 

エネルギー地図を変えるシェールガス革命

世界のエネルギー関係者が、原子力に代わる当面のエネルギーとして見ているのが天然ガスである。特にエネルギー地図を大きく塗り替えるものとして注目しているのが、硬い岩盤層に閉じ込められたシェールガスである。従来は掘削
が難しかったが、水圧破水法という技術が開発されたことで低コストでの採掘が可能となっている。

 

今のところシェールガスを商業生産しているのは米国のみだが、既に天然ガス生産量の23%(10年)を占めており、米エネルギー省は三五年には同比率が四七%に上昇すると見る。米国はこの眠れる資源の商業化に成功したことから、09年時点でロシアを抜いて世界最大の天然ガス産出国になったばかりか輸出も開始している。しかも米エネルギー省は、米国のガス輸入依存度を従来は二五年で二八%としていたが、09年には、30年時点で3%と大幅に引き下げている。

 

米国におけるシェールガス革命の影響をまともに受けたのが、天然ガス吠国のカタールとロシアである。カタールは米国向けにLNGの開発を進めていたが、突然の需要の減少で計画の見直しと欧州への切り替え販売を余儀なくされ
た。さらに、それまで欧州の天然ガス市場において我が物顔に振る舞っていたロシアも、本来、米国向けだったLNGがスポット物として欧州に流入してきた上にガタールーカスの新規参入の余波を受け、中国・日本・韓国といったアジア市場への輸出増を図らざるを得なくなっている。こうした動きは、ガス供給を挺子とするロシアの飼喝外交にも影を落としている。

 

シェールガス革命は、徐々にではあるが米国の中東政策にも影響を及ばしつつある。これまで米国は、西側諸国への円滑な石油の供給を確保するという観点から、サウジアラビア等の湾岸の王制・首長制国家との関係ではやや遠慮し
た物言いに終始してきた。だが、今後、米国のみならず欧州等でのシェールガスの開発が進めば、対中東外交の自由度がそれだけ増すことになる。そうなれば「民主化」対「石油」という二律背反の目標の間で呻吟する必要はなくなり、湾岸の王制・首長制国にも政治・経済改革を要求しやすくなってこよう。

 

いわゆる欧米メジャーもシェールガスヘの進出を早めている。例えば、世界最大のオイルメジャーのエクソンモービルは、シェールガス採掘技術を持つXTOFXエナジーを総額360億ドル(2兆9000億円弱)で買収しているし、トタル(仏)やBP(英「等も米国のシェールガスに投資している。シェールガスは、米国だけでなく欧州や中国等にも相当量埋蔵する。特に中国の埋蔵量は二六兆立方メートルと推定される。仮に、その二割でも回収が可能となれば中国の消費量の60年分弱にもなるだけに、世界のエネルギー需要に大きな影響を与えよう。中国はシェールガスが有効利用できた場合の重要性を認識しているようで。一一年五月に開かれた「米中戦略対話」では、米国の技術面での協力を取り付けて作業部会を設けることで合意している。もっとも中国での水圧破水法によるシェールガス開発では、水不足という根本的な問題を克服する必要がある。

 

なお欧州の場合、シェールガス等の非在来型天然ガス埋蔵量は、在来型埋蔵量の11倍にのばると見られる。ただし、結構ずくめに見えるシェールガスにも弱点がないわけではない。米国での掘削・生産が進むにつれて、次第に環境汚染の実態も明らかになっている。飲料水にメタンが混入していることが判明したのである。この六月十八日にはカナダのモントリオールで、シェールガスの採掘中止を求めて約3000人がデモ行進を行う事態も起きている。同様の懸念は米
国でも出てきている。今後、環境面への配慮に伴うコスト増の程度が、再生可能エネルギー普及までのつなぎ役として俄然期待の高まるシェールガスの行く末を決めることになろう。

 

このような混沌とした世界ではFXにチャンスがくるであろう。